割と料理が好きなほうなので、マメに台所に立つ。得意料理は何?と聞かれると困ってしまうのだが、作っていて楽しいのは煮込み料理。
例えばトマトソース。つぶしたにんにくを、香りがたつまでゆっくりとオリーブオイルで炒めたら、すりおろした玉ねぎを加えるのが私流。玉ねぎが色づいたら、ホールトマトを加えことこと煮込む。ふつふつと煮込まれつつあるトマトソースを、ぼんやりと見つめながらいろいろな事を考える。昔のこと、明日の天気、嫌な思い出。時折、木ベラで混ぜながらゆったりと過ごす時間ごと、料理が好きなのかもしれない。
以前、母にどうやったら煮物が上手くできるのか尋ねたことがある。どうやっても、母や祖母の作る煮物には適わないのがちょっと悔しかったのだ。すると母は、何を言っているのといった感じでこう答えた。
「想いの量が違うから適うわけないじゃない。お母さんはあなた達のこと、おばあちゃんはお母さん達のことプラスあなたたちのこと。想う相手ができれば、自然と上手くなるわよ」
どうやら私が煮物上手になるには、もうしばらくかかるらしい。